「ね――――づ―――!!!」
HRも終わり帰り支度をしていた子津は急に大きな声で呼ばれビックリして、声のする方(ドア)を見た。
「さっ猿野くん?」
そこにいたのは同じ部活で仲の良い猿野がいた。
「どうかしたっすか?」
猿野の側に行き、なぜ自分のクラスに来たのか理由を尋ねた。
「子津!!一生のお願いだ、オレに数学を教えてくれ」
土下座でもしそうな勢いで猿野は子津に頭を下げた。
明日から中間テストが始まる。
部活動は全て休みである。もちろん野球部の猿野(達)も同じだ。
数学が苦手な――――と言っても保健(体育)以外は全て苦手なのだが・・・
赤点を取るわけにもいかないので子津に教えてもらおうとここまで来たのだ。
「別にいいっすけど、何処でやるっすか?」
「子津のクラスでいいぜ、カバン持ってきたし」
ほらな、っといいながら猿野はカバンを見せた。
「じゃっ、やるっすか?」
「おう!」
猿野は子津の後ろに続いて教室に入ると、クラスの半分以上はもういなくなっていた。
猿野達が話してる間にもう片方のドアから帰っていった様だ。
「じゃぁな、子津」
「明日からのテスト頑張ろうな!」
子津のクラスメート(数人)が手を振りながら教室から出ていった。
「さよならっす」
子津も笑顔で手を振り見送った。
それを見ていた猿野が
「なんだクラスの奴等と上手くいってんじゃん。お父さんは安心したよ」
と泣き真似をしながら子津の頭を撫でた。
「さっ猿野くん…」
子津は呆れながら教科書を出し机の上に広げた。
「早く勉強するっす」
「へいへい。ちぇ、突っ込んでくれよ」
「でも猿野くん・・・数学なら僕より沢松くんや辰羅川くんの方が得意っすよ」
・・・・・・・・・・・・
猿野は一瞬言葉を詰まらせたが、顔を上げ思い切ったかのように話出した。
「最近、子津と二人っきりってのが無かったからよ・・・勉強ってのは口実だよ・・・」
子津は一瞬何を言われたのか分からずポカンと猿野の顔を見ていたが、
次の瞬間ボンッと音がしそうなほど顔が真っ赤になった。
「さっ猿野くん」
猿野も子津と同じくらい顔を赤くして
「なーテストの最終日の放課後、久し振りにデートしねーか?部活も無いことだしよ・・・」
「えっ?はっはいっす。・・・嬉しいっす」
子津は赤い顔をしながらも笑顔で答えた。
そして猿野と子津は回りに花を飛ばしながら仲良く勉強をやり始めた。
しかし廊下では・・・・・・
「ハー、さっさとあの甘い雰囲気をどうにかしてほしいですよね。教室に入れないじゃないですか。
それもこれも犬飼くん!貴方が忘れ物なんかするからですよ!!」
「とりあえず、スマン」
ドアに寄りかかりながら溜め息を吐いている辰羅川と犬飼の姿が見られたらしい。